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きんぎんこばん

金銀小判

小川 未明

「良友」1920(大正9)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,359 字 · 5 页

青空文庫

独り者の幸作は、家の中に話し相手もなくその日を暮らしていました。北国は十二月にもなると、真っ白に雪が積もります。そのうちに、年の暮れがきまして、そこ、ここの家々では餅をつきはじめました。

隣は地主でありまして、たくさん餅をつきました。幸作は、そのにぎやかな笑い声を聞きますと、どうかして自分も金持ちになりたいものだと空想したのであります。

やがて、わずか日がたつとお正月になりました。けれど独り者の幸作のところへは、あまりたずねてくる客もなかったのです。結局そのほうが気楽なものですから、幸作は、こたつに入って寝ていました。

外には雪がちらちらと降って、寒い風が吹いて、コトコトと窓の戸や、破れた壁板などを鳴らしていました。元日も、こうして無事に暮れてしまった夜のことであります。

「両替、両替、小判の両替。」と、呼んで歩く子供の声が聞こえたのであります。

毎年この夜は、お宝船や、餅玉の木に結びつける小判をこうして売って歩くのでありました。

けれど、この晩は雪が降っていましたから、いかにもその中をこうして呼んで歩いている子供の声が哀れに聞こえたのであります。