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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

11 影人形

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,251 字 · 39 页

青空文庫

」

「そりゃあお前。」藤吉である。

「この武右衛門さんの影じゃあなかったのかな。」

「冗談じゃあねえ。」

出方の藤吉は、自分の証言を守るために一生懸命になっていた。

「そん時ぁもう、武右衛門さんはこのとおりここに倒れていたんで。」

「じゃあ、その影のことを、もそっと詳しく話してみな。」

「へえ。ようがすとも!――と言ったところで、なにしろとっさの出来事だったんで、どうもぼんやりしたお話で困りやすが、なんですよ親分さん、影はね、傴僂のようでしたよ。」

「せむし――?」

「ええ。大きな髪を結って、手に何か持っていやした。」

「何を持っていた。」

「何だか知らねえが、糸のような物を持っているのが見えたんで――。」

みな黙って、交る代る顔を見合っていた。割れるような拍手が聞こえて来て、つづいてまた唄と三味線がはじまって、しいんとなった。

「無理もねえ。」藤吉は、しずかに、「影じゃあそんなところまでわかるわけはねえからの。ことに、ちょっと間、ちらと眼にうつっただけじゃあ、これは、細けえことは訊くほうが唐変木よなあ。」

「しかし親分、どうして人がいねえで、影だけ見えたんでごわしょう。