轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

04 槍祭夏の夜話

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,085 字 · 21 页

青空文庫

その良人というのも出て来てなにくれと懇切に見てくれた。たしかにどこかで見たような顔、そんなような気がするだけで、どこの誰か、果して真個に会ったことのある仁か、与惣次はいっこう思い出せなかった。咽喉が痙攣って物を言おうにも口が開かなかった。口は開いても声をだす術を忘れ果てていた。身体は鉛のように重かった。手の指一本が、とても与惣次には動かせないほどだった。

今夜は泊ってゆっくり休んで行くようにと、男も女も口を揃えて言っているらしかったが、その声音がまるで水の底からでも聞こえて来るようだった。こう大儀じゃ夜道どころか寝返り一つ打てやしめえし、と与惣次は肚を据えた。まあ何家でもいいや、今晩はここに厄介になれ――。

「儂はいささか薬事の心得があります。今、水薬を調じて上げるほどに、そいつを服してまずお気を鎮められい。よっく眠れることでござろう。」

主人は変な言葉遣いをした。どこかで見覚えのある顔、与惣次はしきりに考えたが、漸次にその力がなくなった。譬えば雪が解けるように、頭脳の働きが鈍くなってくるのである。それでも、主人の手が自分の口を割って冷茶のような水物を流し込んでくれたまでは、ぼんやりながら薄眼で見ていた。