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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

04 槍祭夏の夜話

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,085 字 · 21 页

青空文庫

」

一言吐いて与惣次を見据え、太い低声で、

「与惣、丸坊主たあ化けたのう?」

「へ?」

「いやさ、富さん、卍の富、うまくやったぜ、おう。」

「旦那――。」

「待った! その旦那がよくねえ。真の与惣なら俺を知ってるはず、こうっ、素っ堅気じゃあるめえし皆さん俺を親分とこそ呼べ、旦那なんて糞面ひろくもねえ。えこう、種あ割れたんだ、富、年貢を納めろっ、野郎っ、どうだっ!」

「だ、だ、誰だ手前は?」

「唐天竺の馬の骨。」

「う――む。」

面色蒼褪めて富五郎、壁を背負って仁王立ち。

「卍の富五郎。」にやりと笑った藤吉、「釘抜だ、藤吉だ、神妙に頂戴するか。」

ぱっと昇った灰神楽、富五郎が蹴った煙草盆を逃げて跳り上った釘抜藤吉、足の開きがそのまま適ってお玉が池免許直伝は車返しの構え。

「洒落くせえ。」

「うぬ!」

どこに隠し持ったか、西京達磨の名ばかり正宗、富五郎の手にぎらり鞘を走る。

「抜いたな。」

「応さ。」

呼吸と呼吸、眼配りと眼配り――面倒と見た勘弁勘次、物を打つければ中間へ飛んで邪魔になるから、かねての心得、空拳を振って抛る真似、逆上っているから耐らない、卍の富五郎法を忘れて切ってかかる。