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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

04 槍祭夏の夜話

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,085 字 · 21 页

青空文庫

掻い潜った藤吉、

「御用だ!」

と一声、懐深く呑んだ十手がはっしと唸って肩を撃つ。よろめく富、畳に刺さった斬先を立て直そうとする間一髪、物をも言わず齧りついた鉄火の勘次、游ぐ体を取って腰で撥ねるのは関口流の岩石落しだ。卍の富五郎そこへ長くなってしまった。

長屋中の弥次馬の波を分けて、橋詰のお番屋へ富五郎を縛引いた藤吉と勘次、佃にかかる新月の影を踏んで早くも今は合点小路へのその帰るさ。

「割方脆え玉さのう。」

先に立った藤吉が言う。追いついた勘次、

「だが親分、器用な細工じゃごわせんか。あっしなんか切れへくるまで与惣公とばかり思い込んでた。」

「九仭の功を一簣に虧く。なあ、そのままずらかりゃ怪我あねえのに、凝っては思案に何とやら、与惣公と化込んで一、二日日和見すべえとしゃれたのが破滅の因、のう勘、匹夫の浅智慧、はっはっは。われから火に入る夏の虫だあな。」

「夏の虫あいいが、真の与惣あどうなりましたえ?」

「はあてね、大川筋から隅田の淀でも今ごろあせっせと流れていべえが、ぶるるっ、酷えこった。それにしても小物師どん、常日口が軽すぎるわさ。」

万事が富五郎の白状ではっきりした。