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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

05 お茶漬音頭

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,874 字 · 20 页

青空文庫

「儂だ。約束だ、開けてくれ。」

「約束? 約束なんかあるわけはないよ。」

戸を距てての押問答。

「お前じゃわからない。御主人と約束があるんだ。待ってなさるだろ、奥へそ言って此戸開けてくれ。」

「駄目だよ、世間様が物騒だから閉てたが最後大戸だけは火事があっても開けちゃあいけないって、今夜も寝る前に大番頭さんに言われたんだ。何てったって開けるこっちゃないよ。お帰り。朝おいで、へん、一昨日おいでだ! 誰だいいったいお前さんは?」

「誰でもいい。御主人か大番頭に会やあ解るこった。お前は小僧だろう、ただ取次ぎゃいいんだ。」

「馬鹿にしてやがる。お前は小僧だろってやがらあ。へへへのへん、だ。誰が取次ぐもんか。」

小僧しきりに家の中で威張っていると、

「何だ、騒々しい、何だ!」

と番頭でも起きて来た様子。

「あ、大番頭さんだ。」と小僧はたちまち閉口んで、「だって、いとも怪しの野郎が襲って来てここを開けろ、開けなきゃどんどん――。」

「やかましい。怪しの野郎とはなんです。お前はあっちへ引っ込んでなさい――はいはい、ええ、どなた様かまた何の御用か存じませぬが、このとおり夜更けでございますから明朝改めて御来店を願いたいんで、へい。