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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

08 無明の夜

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,547 字 · 27 页

青空文庫

」

「おお、な、何と、何と言ったえ。」

「へえ。俺にゃあわかってる、と口早にね、それだけは聞こえましたが――。」

「なに? 俺にゃあわかってる?」

「へえ。俺にゃあわかってる――して親分、ああして手で何か指さしながらがっくりなりましたよ。あああ、嫌な物を見ちまいました。」

なるほど、死人が草の上に延ばした右手人差指の先、そこに畳み提灯がぶらのまんま抛り出されて、筆太に八百駒と読める。

三

「弓を射たたあ親分、大時代な殺しでごぜえすの。」

勘次が口を出した。が、藤吉は答えもしないで、

「矢が、これ、折れてやがる。中ほどからぽっきり――はてな。」と独語ちながら、その矢をぐいと引抜いた。わりに短い。と見ていると、矢羽の下に、勧進撚が結んである。濡れて破けそうなのを丹念に解いて、拡げた。案の定、矢文である。天誅と二字、達者な手だ。

「弓矢と言い、この文句といい、素町人じゃあねえな。」

親分の肩越しに葬式彦が首を捻った。

「あいさ、いっそ難物だあね。」

同ずる勘次。藤吉、しきりに髷をがくつかせていた。

鬼草というのが、今宵人手にかかって非業の死を遂げた草加屋伊兵衛の綽名だった。