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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
08 無明の夜
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,547 字 · 27 页
夜更けて帰宅る金貸し老爺、何しに町筋を外れて木槌山のかげへ立寄ったろう? ほかで射殺してここへ運んだものか。それにしては提灯などが落ちているのが呑み込めない。それよりも、呑み込めないと言えば、そもそも何のために古めかしい飛道具なぞを持ち出したものか。それに、矢は二つに折れている。のみならず矢文の文字の天誅、これをそのまま受け入れていいか――。
抜いた矢を右手に、傷口を検めていた釘抜藤吉、つぎに、七転八倒を思わせる伊兵衛の死相を凝視めながら、何思ったか急にからから笑い出した。甚右衛門がぎょっとして唸ったほど、折が折だけ、それは不気味な笑いであった。
「親分、臭えぜ。これ。」
勘次と二人で先刻から草を分けていた彦兵衛が、こう言って高下駄を拾って来た。安物のせんの木の台、小倉の緒、麗々しく八百駒と焼印してある。藤吉はじっと見ていたが、やがて誰にともなく、
「紛失物はねえかな――こう、なくなり物はよう――。」
勘次が答える。
「爺あよく杖をついて歩いてるのを見かけやしたが――。」
「そうそう、」佐平次が応じた。「あの鬼草の金棒は曲木の杖、評判でさあ。知らねえ者あございません。