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てつのきりつ

鉄の規律

平林 初之輔

「新青年 第一二巻第一〇号」1931(昭和6)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,016 字 · 30 页

青空文庫

不逞な奴らではあるが、その点は実に感心ですよ」彼はこの時ふと柱時計を見て独り言ちた。「ところでもう四時間になる。至急報でやったんだから返事は来そうなもんだが」

実際、その言葉がおわらぬうちに、給仕が捜査課宛の電報をもってきた。

「フカイアサジナルモノトウチニナシ」

課長は呆気にとられて、電報を刑事に渡した。

「大方こんなことだと思っていました」と刑事は驚いた様子もなく言った。「とにかく総監から東亜局長に、先日の演説の要旨をひとまず公に取り消していただくように話していただいた方がよいと思いますね。この次には必ず、どんなに警戒したって局長の生命を防ぎとめることはできんと思いますから、相手は何しろ八千人の決死的党員をもった正義党のことですからね。それに、党員はどこに潜入しているかもわからないんですから、ことによると課長、私から見れば貴方だって党員かもしれず、貴方から見れば私だって党員かもしれないと思うくらい、厳重に警戒をしなくちゃならんですからね」

「鉄の規律か、なるほど、鉄の規律!」

課長は大きくため息をついた。

*   *   *

その後、正義党の東亜局長暗殺の計画は失敗して、党員は一人のこらず検挙されたということだが、党員八千人とか十万人とかいう説は飛んでもない誇張で、党員はわずか四十九人だったという