轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
かなづち
鉄鎚
夢野 久作
「新青年」1929(昭和4)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,659 字 · 62 页
ているのではないか……と疑えば疑い得る筋がないでもない位の事であった。
しかしそのうちにフト気が付いて、叔父の斜うしろに坐っている伊奈子の様子を見ると、こうした私の忌まわしい疑いも無用である事がわかった。彼女は如何にもつつましやかな態度で、さしむきながら聞いているにはいたが、しかし内心は飽き飽きしているらしく、叔父の話が自分達母子と全く無関係である事を、特に私にだけコッソリと知らせたがっている気持ちが、その溜め息のし工合いや、白い絹ハンカチの弄びようだけでもアリアリと察しられたので、私は何故かしらホッと安心させられたように思った。そうしてあとには大袈裟な身ぶりを入れて喋舌っている叔父の、滑稽なくらい真剣な表情だけが印象に残ってしまった。
「……だから……おれは近いうちに、伊奈子と二人で家を借りて住むつもりだ。今までみたいに待合にばかり泊っていちゃ、伊奈子のためにならないからナ。ハハハハハ」
叔父はお終いに、こう云って笑いながら壁に掛けたパナマ帽子の方へ手を伸ばした。
すると……その瞬間に、流石の私もハッとさせられた事が起った。それは今の今までつつましやかにうつむいていた伊奈子が大きな眼で上眼づかいに私を見て、頬をポッと染めながらニッコリと笑って見せたからであった。