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ぎんのペンセル
銀のペンセル
小川 未明
「児童時代 創刊号」1930(昭和5)年12月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,618 字 · 6 页
三味線をひいて、旅の女が、毎日、温泉場の町を歩いていました。諸国の唄をうたってみんなをおもしろがらせていたが、いつしか、その姿が見えなくなりました。そのはずです。もう、山は、朝晩寒くなって、都が恋しくなったからです。
勇ちゃんも、もう、東京のお家へ帰る日が近づいたのでした。ここへきて、かれこれ三十日もいる間に、近傍の村の子供たちと友だちになって、いっしょに、草花の咲いた、大きな石のころがっている野原をかけまわって、きりぎりすをさがせば、また、水のきれいな谷川にいって、岩魚を釣ったりしたのであります。
「君、もう、じきに東京へ帰るのか。」と、一人の少年が勇ちゃんにききました。
その子は顔がまるくて、色の黒い快活の少年でした。勇ちゃんは、この少年が好きで、いつまでも友だちでいたかったのです。
「君のお家が東京だと、いいんだがな。」と、勇ちゃんは、いいました。
「君のお家こそ、こっちへ引っ越してくれば、いいのだ。」と、少年は答えました。
空の色が、青々として、白い雲が高く野原の上を飛んでゆきます。
あとの子供らは、いつか、どこかへいってしまったのに、その少年ばかりは、名残惜しそうに勇ちゃんのそばから、いつまでもはなれずにいました。