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ぎんさんじゅうまい

銀三十枚

国枝 史郎

「新青年」1926(大正15)年3月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,863 字 · 73 页

青空文庫

とても大きな白金なんだ。五十匁ぐらいはあるだろう。たった一枚で三千円だ。それがみんなで三十枚あるんだ。佐伯の物だ、大詐欺師のな。最初に俺が借りたんだ。そいつをあいつが取っちゃったんだ。あっ痛え! そう引っ張るな! 嘘じゃアねえ、本当のことだ。大馬鹿野郎め、ふん掴まえてしまえ! 引っかかったんだよ、ペテンにな。捕縛されるのが解ってたんだ。俺は文士だ、小説書きだ。そこをきゃつが狙ったんだ。でたらめの話をしやがって、俺の好奇心をそそりゃアがって、そいつを俺に預けやがったんだ。古いペテンだ、古いとも。牢から出ると取りに来るやつよ。いい隠し所を目つけたって訳さ。本当の事だ、信用しろ。家捜ししなよ、俺の家を、きっとどこかにあるだろう。……そこは女のあさましさだ。眼がクラクラと眩んだんだ。うん、白金を手に入れるとな。すっかり変わってしまやアがった。……」

刑事はニヤニヤ笑っていた。公園を出ると町であった。右角に貸自動車の待合があった。

「おい、自動車」と刑事は呼んだ。

「へい」と運転手が走って来た。

「この男を載っけてくれ」

すぐ自動車が引き出された。私はその中へ押し込まれた。