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ぎんさんじゅうまい

銀三十枚

国枝 史郎

「新青年」1926(大正15)年3月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,863 字 · 73 页

青空文庫

……だが大変結構だ」

これも決して皮肉ではなかった。もしも彼女が下手人なら、一緒に住んでいたこの私も、必然的に渦中に入れられ、現在の穏かな生活を、破壊されるに相違ない。それは私の望みでなかった。それにもう一つ何と云っても、彼女は私の妻であった。その女の身に不幸のあるのは、私としては苦しかった。

事件は迷宮に入った方がよかった。

穏かな日が流れて行った。

だが十日とは続かなかった。次のような広告が新聞へ出た。

「銀三十枚の持主へ告げる。△△新聞社迄郵送せよ。報酬として一万円を与う」

22

「これはおかしい」と私は云った。

「銀三十枚の持主といえば、彼女以外にはありそうもない。そいつを請求出来る者は、佐伯準一郎氏の他にはない。だが佐伯氏は殺されている。誰が請求しているのだろう?」

新聞の来るのが待たれるようになった。数日経った新聞に、同じような広告が掲げられてあった。

「銀三十枚の持主に告げる。銀三十枚を郵送せよ。報酬として二万円を与う」

「報酬金が倍になった」

私の興味は加わった。

数日経った新聞に、同じような広告が載っていた。

「銀三十枚の持主に告げる。十二使徒だけを郵送せよ。