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どうせんかいじへん
銅銭会事変 短編
国枝 史郎
国枝史郎『銅銭会事変 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:銅銭会事変、大鵬のゆくえ、紅白縮緬組、三甚内。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,745 字 · 216 页
「観音様へ参詣しお賽銭ぐらいは上げるだろうね」
「おや、そいつは本当だね」
いい捨ててお色は戸外へ出た。プーッと春風が鬢を吹いた。で彼女は鬢を押さえた。プーッと春風が裾を吹いた。今度は前を抑えなければならない。「風さえ妾を嬲っているよ」彼女はそこでニッコリとした。鳩がポッポと啼いていた。彼女の周囲へ集まって来た。
「厭だねえこの鳩は、邪魔じゃないか歩くのにさ」
御堂の前で掌を合わせた。帯の間から銭入れを抜き、賽銭箱へお宝を投げた。
「どうも有難う、観音様。みんなあなたのご利益よ」
で彼女は歩いて行った。
「何て今日はいい日なんだろう。みんな妾に笑いかけているよ。何だか知らないが有難うよ」
往来の人が囁き合った。
「あれが評判のお色だよ」「どうでえどうでえ綺麗だなあ」「今日は取りわけ美しいぜ」
「はいはい皆さん有難うよ」彼女は笑って口の中でいった。
「でもね、皆さんお生憎さまよ、見せる人はほかにあるんですよ」
逢ってくれない弓之助
走り使いの喜介の家は、二丁目の露路の奥にあった。お色は煤けた格子戸を開けた。
「ちょいと喜介どん、頼まれて頂戴」
菊石面の四十男、喜介がヒョイと顔を出した。