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どうせんかいじへん
銅銭会事変 短編
国枝 史郎
国枝史郎『銅銭会事変 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:銅銭会事変、大鵬のゆくえ、紅白縮緬組、三甚内。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,745 字 · 216 页
「いや今夜は引っ返したがいい」
彼らの囁やきは葉擦れのようであった。
「あっ!」と一人が絶叫した。「あの人数は? 包囲された!」
まさしくそれに相違なかった。往来の前後に黒々と、数百の人数が屯ろしていた。隅田川には人を乗せた、無数の小舟が浮かんでいた。露路という露路、小路という小路、ビッシリ人で一杯であった。捕り方の人数に相違なかった。騎馬の者、徒歩の者、……八州の捕り方が向かったのであった。
銅銭会員は一団となった。やがて十人ずつ分解された。そうして前後の捕り方に向かった。
こうして格闘が行われた。
全く無言の格闘であった。だがどういう理由からであろう?
官の方からいう時は、御用提燈を振り翳したり、御用の声を響かせたりして、市民の眼を覚ますことを、極端に恐れ遠慮したからであった。捕り物の真相が伝わったなら、――すなわち将軍家紛失の、その真相が伝わったなら、どんな騒動が起こるかも知れない。それを非常に案じたからであった。
だがどうして銅銭会員は悲鳴呶号しなかったのであろう? それは彼らの「十禁」のうちに、こういうことがあるからであった。
「究極において悲鳴すべからず。