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もみじぞめたきのしらいと

錦染滝白糸

泉 鏡花

――其一幕――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,614 字 · 16 页

青空文庫

場所。

信州松本、村越の家

人物。

村越欣弥(新任検事)

滝の白糸(水芸の太夫)

撫子(南京出刃打の娘)

高原七左衛門(旧藩士)

おその、おりく(ともに近所の娘)

撫子。円髷、前垂がけ、床の間の花籠に、黄の小菊と白菊の大輪なるを莟まじり投入れにしたるを視め、手に三本ばかり常夏の花を持つ。

傍におりく。車屋の娘。

撫子 今日は――お客様がいらっしゃるッて事だから、籠も貸して頂けば、お庭の花まで御無心して、ほんとうに済みませんのね。

りく 内の背戸にありますと、ただの草ッ葉なんですけれど、奥さんがそうしてお活けなさいますと、お祭礼の時の余所行のお曠衣のように綺麗ですわ。

撫子 この細りした、(一輪を指す)絹糸のような白いのは、これは、何と云う名の菊なんですえ。

りく 何ですか、あの……糸咲々々ってお父さんがそう云いますよ。

撫子 ああ、糸咲……の白菊……そうですか。

りく そして、あのその撫子はお活けなさいませんの。

撫子 おお、この花は撫子ですか。(手なる常夏を見る。)

りく ええ、返り咲の花なんですよ。枯れた薄の根に咲いて、珍しいから、と内でそう申しましてね。