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さっかくすうだい

錯覚数題

寺田 寅彦

「中央公論」1933(昭和8)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,152 字 · 18 页

青空文庫

ことによると九十パーセントが間違いかもしれない。

いっそのこと、全部間違いばかりと事がらがきまればかえって楽であるが、困ったことには時にほんとうなことが交じるので全部捨てるわけにゆかないから始末が悪いのである。

われわれの目も時々われわれをだますが、いつもだますと限らないで、時々は気まぐれにほんとうのものを見せてくれるので困る。そうでなければ目などはないほうがたしかに利口になれるであろう。

ハイディンガー・ブラッシと称するものがある。偏光を生じるニコルのプリズムを通して白壁か白雲の面を見ると、妙なぼんやりした一抹の斑点が見える。すすけた黄褐色の千切り形あるいは分銅形をしたものの、両端にぼんやり青みがかった雲のようなものが見える。ニコルを回転すると、それにつれて、この斑点もぐるぐる回る。自分も学生時代にこれに関する記事を読んでさっそく実験してみたが、なかなか見えない。そのうちに、ニコルをやけに急激にねじ回していると、なんだか、時々ぱっぱっと動くものがあるような気がするので、それに注意を集注して見ると、なるほど、ちゃんと書物に記載してあると同じようなものが見える。