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さっかくすうだい

錯覚数題

寺田 寅彦

「中央公論」1933(昭和8)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,152 字 · 18 页

青空文庫

ない。それで本のほうは断念して、園芸好きのR研究所の門衛U君に教わって理研製殺虫剤ネオトンのやや濃度の大きい溶液で目的を達せられることを知った。園芸書の著者になってみると、何々会社製の何剤がいいなどと明白に書くのは何かいけないさしつかえがあると見える。ラジオ放送と似た禁令があるかもしれないが、読者の要求に対しては不親切であると思われる。

墨の製法を書いた本はないかと思って気をつけて見たが、なかなか見つからない。化学的染料塗料色素等に関する著書はずいぶんたくさんにあるが、古来のシナ墨、それは現在でもまだかなりに実用に供されているあの墨の詳しい製法を書いたものは容易に見つからない。昔の随筆物なども物色してみたし、古書展覧会などもあさって歩いたがやっぱり自分の目的に適合するものは無い。ところが、自分の研究所のW君のにいさんが奈良県の技師をしておられるというので、これに依頼して、本場の奈良で詮議してもらったら、さっそく松井元泰編「古梅園墨談」という本を見つけて送ってくれたので、始めてだいたいの具体的知識に有りついた。なお後にこのほかに松井元惇の「梅園日記」