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かぎ
鍵
谷崎 潤一郎
「中央公論」中央公論社、1956(昭和31)年1月、5月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,182 字 · 200 页
螢光燈の明るさの下で夫の下半身が露出されたので、二人はハッとしたらしいが、私の方が一層きまりが悪かった。私は自分がつい一時間前まで、この人のこの体を自分の体の上に乗せていたということが、何だか信じられない気がした。私はしばしば自分の素裸の体をこの人に見られ、何十回となく写真にまで撮られているのであるが、自分は彼の素裸の体を、こういう角度で全身像の形においてしげしげと観察したことはない。しようと思えばできたのであるが、今まで努めてそうすることを避けていた。彼が裸でいる時はできるだけぴったり寄り添って抱き着くようにし、全身像が見えないようにした。彼は私の各部分々々について、恐らくは毛孔の数まで調べ尽していたらしいが、私は彼の体の恰好については、木村のそれを知り尽しているようには知っていなかったし、知りたくなかった。知れば一層嫌いになることが豫想されていたからであった。私はこんな貧弱な体の人と寝ていたのかと、不思議に感じられた。私のことをガニ股だと云うが、彼のガニ股は私どころの段ではないことが、こういう姿勢で臥かしてみると、改めて合点された)それから児玉さんは、病人の左右の脚を一尺五六寸ほどの間隔に開いて、睾丸がよく見えるようにした。