轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

かがみのなかのつき

鏡の中の月

宮本 百合子

「若草」1937(昭和12)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,290 字 · 15 页

青空文庫

「そりゃあの人にしてみれば、あなたに承諾されれば全く申し分がないだろうけれど――私ひとつ女の側から訊いてみよう、ね、あなたが下らなくひっかかっちゃ私もくやしいもの」

十時すぎて、たたんだ袴を風呂敷づつみにして持ち、かりた単衣帯をちょっとしめて帰って来た瀧子が駅の改札口を出ようとしたら、

「やあ、おそいですな」

売店の横から立って、ワイシャツに上衣なし姿の山口が近よって来た。笑いの中に好奇心を現わして二人を見ている売店の女は、朝夕そこを通って出入りしている村人全体の顔馴染である。挨拶をして、そのままさっさと駅前へ出る瀧子を追って山口は並んで歩いた。

「実はさっきちょっとおよりしたんだったが、御不在だったから――きのうの話は、いかがです、お考えがつきましたか」

瀧子は馬をはなした荷馬車が置いてある乾物屋の軒下に立ちどまってしまった。

「いずれゆっくり御返事いたしますけれど、今夜はもうおそいし、私も困りますから……五十八分でおかえりでしょう?」

「どうも――もうちっと僕の人格を信じて下すってもいいでしょう」

ハッハッハと山口は笑ってタバコに火をつけるのであるが、瀧子はそこから一足も動こうとしなかった。