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しっぽうのはしら
鏡花短編集
泉 鏡花
泉鏡花『鏡花短編集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:七宝の柱、若菜のうち、栃の実。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,632 字 · 32 页
その紺地に、清く、さらさらと装上った、一行金字、一行銀書の経である。
俗に銀線に触るるなどと言うのは、こうした心持かも知れない。尊い文字は、掌に一字ずつ幽に響いた。私は一拝した。
「清衡朝臣の奉供、一切経のうちであります――時価で申しますとな、唯この一巻でも一万円以上であります。」
橘南谿の東遊記に、
これは清衡存生の時、自在坊蓮光といへる僧に命じ、一切経書写の事を司らしむ。三千日が間、能書の僧数百人を招請し、供養し、これを書写せしめしとなり。余もこの経を拝見せしに、その書体楷法正しく、行法また精妙にして――
と言うもの即これである。
ちょっと(この寺のではない)或案内者に申すべき事がある。君が提げて持った鞭だ。が、遠くの掛軸を指し、高い処の仏体を示すのは、とにかく、目前に近々と拝まるる、観音勢至の金像を説明すると言って、御目、眉の前へ、今にも触れそうに、ビシャビシャと竹の尖を振うのは勿体ない。大慈大悲の仏たちである。大して御立腹もあるまいけれども、作がいいだけに、瞬もしたまいそうで、さぞお鬱陶しかろうと思う。
俥は寂然とした夏草塚の傍に、小さく見えて待っていた。