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かがみもち

鏡餅

宮本 百合子

「新潮」1934(昭和9)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,163 字 · 15 页

青空文庫

一休みして、満子がメリンスの風呂敷包みから、派手な藍色の毛糸を出し、それを編みはじめた。まさも下から黒と赤の混ざったスコッチの赤坊靴下のあみかけをもって来て編みはじめた。

サエとサワ子はわきから顔を近くよせて自分もやって見たそうに眺め、進は居心地よさそうにはまりこんだ元の場所から、佐太郎はカリンの机の前から、二人の女の、速い、むらのない編棒の動きを見ている。

半分カサがこわれながらも、明るい電燈の光が人のつまった狭い六畳の端から端までを暖く照している。この電燈の下に、こういう顔ぶれが集ることはよくあった。しかし、今夜のように、まさまで編みものをとり出しているのは、全く珍しい光景であった。

一ヵ年余の未決生活の後、どんな心持で佐太郎はこの大晦日の夜の刻々を感じ、うけとっているであろう。サエは正月に向って五日前専吉が検挙されている今の自分の感情の逆な場合として自然そのことを思い、佐太郎とまさの気持がまざまざと分るように感じるのであった。

両方とも飾編を終って、まさが紐に白テープをとおしはじめると、佐太郎がちょっとせきこんだような持前の喋りぐせで、

「そりゃ、黒いテープの方がいい」