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かね

鐘

小川 未明

「童話の社会」1930(昭和5)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,745 字 · 6 页

青空文庫

「そんなはずはない、十俵いれました。」と、男は庭さきにつったって、いいました。

「八俵しか、いれてない。そんないいがかりをつけるなら、倉にはいってかぞえてみるがいい。」と、主人は、いたけだかになりました。

男は、山を五たび下って、またのぼったきおくがあります。それで倉にいって、数をかぞえてみると十いれたものが、八つしかなかった。かれの顔は、土色となりました。しかたなく、八俵の代金をふるえる手で、うけとると、おそろしい顔をして、このいかめしい門のある家をみかえって出ていきました。

男は丘の上に立って、K町を見おろしながら、

「死んでも、忘れやしねえぞ。」といった。

そのとき、少年は、かれのみすぼらしい、いかりにおののいた姿をみたのです。目の下に、林のごとく立った、えんとつからは、黒いけむりが、青い空にのぼっていました。

その後、だれの口からともなく、うわさにのぼった、金持ちが、山男の炭代をごまかしたというのをきいたとき、少年は、ある日、けっして、男は、気がくるっていたのではないのを知りました。そして、この素封家の前を通るたびに、いかめしい門をにらんだのであります。