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かんちょうざじけん
間諜座事件
海野 十三
「日曜報知」1932(昭和7)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,989 字 · 21 页
果然、見る見る裡に蟻の匍っているような小文字が、べた一面に浮び出た。
本部からの指令だった!
3
二人は、マッチ箱の裏に書かれた指令文を読み終ると、合わせていた額を離して、思わず互の顔を見合わせた。二人は一語も発しない。余程重大な指令と見える。
その指令というのは――
(指令本第一九九七八号)
(一)QX30トQZ19トハ、即刻間諜座ニ赴キ、「レビュー・ガール」の内ヨリ左眼ニ義眼ヲ入レタル少女ヲ探シ出シ、彼女ノ芸名ヲ取調ベ、QZ19ハ直チニR区裏ノ公衆電話傍ニ急行シテ黄色ノ外套ヲ着セル二人ノ同志ニ之ヲ報告セヨ。又QX30ハ間諜座内ニ其儘止リテ、打出シト共ニ群衆ニ紛レテ脱出セヨ。
(二)右ノ報告ヲ本日午後十時マデニ報告シ得ザルトキハ、在京同志ハ悉ク明朝ヲ待タズシテ鏖殺セラルルコトヲ銘記セヨ。
「死線は近づいたぞ」
「かねて探していた敵の副司令が判ったというわけだな」
「ウン、義眼を入れたレビュー・ガールとは、うまく化けやがった」
「だが間諜座へ入ることは、地獄の門をくぐるのと同じことだ。固くなったり、驚いたりして発見されまいぞ」
「あのなかは敵の密偵で一杯なんだろうな」