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かっか
閣下
佐々木 邦
「面白倶楽部」1925(大正14)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,494 字 · 16 页
忙しい世の中だ。無用なお天気の挨拶をする世話もなくて、結局この方が楽で宜しい。五年の契約期間が終りに近づいた時、地主は地代を坪十銭に上げると言い出した。華族さまと違って社会奉仕ということを知らない。それにしても倍以上の値上げは横暴だとあって、借地人は有志の家で寄合いを催した。しかしこれは界隈の懇親会として効果を奏した丈けで、地代は矢張り十銭になってしまった。私はその席上で日頃見知り越しの面々に紹介されて、軍人は両隣りばかりでないと承知した。尤も教員と会社員が大勢いた。寄合いを発起したのは二人とも先生であった。
「何うでございましたの?」
と妻が集会のことを聞いた時、私は、
「いや、一向要領を得ない。近所の人と知合になりに行ったようなものさ。軍人の多いのには驚いたよ」
と答えた。これに対して、
「玉置さんのお父さんも大佐ですよ」
「大河内さんところも海軍の中佐よ」
と次男と長女が口を揃えた。子供達は大人仲間よりも社交的だ。それに学校の方の関係があるので自然馴染んでいるのだった。
又五年たって地代は十五銭に上った。今度は廻章が廻った丈けで寄合いはしなかった。