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あなんとじゅじゅつしのむすめ
阿難と呪術師の娘
岡本 かの子
「読売新聞」1928(昭和3)年5月6日~6月19日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,425 字 · 58 页
第五場
(老女涙をこぼす。)
老女 ――わたしにももう分らぬ。祷りは毛綱に移った。毛綱は蛇の様に生きて来た。
(若き美僧の阿難と清艶な娘とが狂いもつれながら、黒蛇のような毛綱に捲き上げられて行く。それはギリシャの彫像ラオコンが現わす苦痛美に、若さとなまめきを添えたものである。)
(阿難、急に思い付きたる様子にて呼び声を挙げる。)
阿難 ――おお師よ。わが師よ。祇園精舎に在す釈迦牟尼仏よ。あなたのあわれな弟子は、今危難の淵に溺れかかって居ます。恥辱の縄に亡びかかって居ります。どうぞ憫れなこの声をお聴き取り下さい。お救い下さい。南無祇園精舎に在すわが師釈迦牟尼世尊よ!
娘 ――阿難さま! お母様!
(二人の呼び声が響き合い、嗄れ疲れ、細り行く間に、舞台、徐々に暗くなり、終に暗転。)
第五場
(舞台一面月夜の空の気持。正面に大きな雲の形あり。雲の中央に仏陀の弟子にて神通第一の目連が僧衣の姿で立って居る。これに従って護法の諸天、神将達が絢爛なる武装にて控え居る。)
目※(「特のへん+廴+聿」、第3水準1-87-71)連 ――阿難奴。またしくじったな。ははははは。今度は本当に弱って居るらしいぞ。