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いんじゅうそのた

「陰獣」その他

平林 初之輔

「新青年 第九巻第一三号」1928(昭和3)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,188 字 · 9 页

青空文庫

二 探偵小説の批評について

という気持ちはわかる。

もし作者が、「静子」が犯人であることに疑いをはさむなら、そして大江春泥に対して疑いをもつ理由が十分にあるのなら、もう一度、大江春泥を俎上にのせて事件の再分析をして見るべきである。それをする代わりに「私」という人間の道徳的自責などをしまいに書いたのでは、せっかく興奮し緊張していた読者の心は、すっかり、冷却し、弛緩してしまう。

私は、探偵小説は、どんな濃厚なものでも(どちらかというと私自身は少し濃厚なものが好きであり、したがって日本の作家では江戸川乱歩を最も好むが)、最後には、何らかの意味ですっきりした爽快味の感ぜられるものが上乗であると思うのだ。

二 探偵小説の批評について

探偵小説は、プロレタリア文学と同じように、日本に生まれてからまだ新しいために、仲間の間で、これまで余りに御座なりな賛めあいが多すぎたように思う。そのためにかえって、一般の文壇からは特殊扱いをされて一向注意されなかった。たとえば江戸川君のごとき一般に作家として優れた天分をもっていながら、やはり仲間の間でしかあまり問題にされていない。国家でもある産業の発達の当初には保護をするのだから、文芸の場合にも、保護がわるいとは言わぬが、いつまでも保護関税の温室内で探偵小説を育て上げておくのはよくない。