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いんえいらいさん

陰翳礼讃

谷崎 潤一郎

「経済往来」1933(昭和8)年12月号、1934(昭和9)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,020 字 · 61 页

青空文庫

蓄音器やラジオにしても、もしわれ/\が発明したなら、もっとわれ/\の声や音楽の特長を生かすようなものが出来たであろう。元来われ/\の音楽は、控え目なものであり、気分本位のものであるから、レコードにしたり、拡声器で大きくしたりしたのでは、大半の魅力が失われる。話術にしてもわれ/\の方のは声が小さく、言葉数が少く、そうして何よりも「間」が大切なのであるが、機械にかけたら「間」は完全に死んでしまう。そこでわれ/\は、機械に迎合するように、却ってわれ/\の藝術自体を歪めて行く。西洋人の方は、もと/\自分たちの間で発達させた機械であるから、彼等の藝術に都合がいゝように出来ているのは当り前である。そう云う点で、われ/\は実にいろ/\の損をしていると考えられる。

○

紙と云うものは支那人の発明であると聞くが、われ/\は西洋紙に対すると、単なる実用品と云う以外に何の感じも起らないけれども、唐紙や和紙の肌理を見ると、そこに一種の温かみを感じ、心が落ち着くようになる。同じ白いのでも、西洋紙の白さと奉書や白唐紙の白さとは違う。西洋紙の肌は光線を撥ね返すような趣があるが、奉書や唐紙の肌は、柔かい初雪の面のように、ふっくらと光線を中へ吸い取る。