轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
いんえいらいさん
陰翳礼讃
谷崎 潤一郎
「経済往来」1933(昭和8)年12月号、1934(昭和9)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,020 字 · 61 页
われらといえども少年の頃は、日の目の届かぬ茶の間や書院の床の間の奥を視つめると、云い知れぬ怖れと寒けを覚えたものである。しかもその神秘の鍵は何処にあるのか。種明かしをすれば、畢竟それは陰翳の魔法であって、もし隅々に作られている蔭を追い除けてしまったら、忽焉としてその床の間はたゞの空白に帰するのである。われらの祖先の天才は、虚無の空間を任意に遮蔽して自ら生ずる陰翳の世界に、いかなる壁画や装飾にも優る幽玄味を持たせたのである。これは簡単な技巧のようであって、実は中々容易でない。たとえば床脇の窓の刳り方、落懸の深さ、床框の高さなど、一つ/\に眼に見えぬ苦心が払われていることは推察するに難くないが、分けても私は、書院の障子のしろ/″\としたほの明るさには、ついその前に立ち止まって時の移るのを忘れるのである。元来書院と云うものは、昔はその名の示す如く彼処で書見をするためにあゝ云う窓を設けたのが、いつしか床の間の明り取りとなったのであろうが、多くの場合、それは明り取りと云うよりも、むしろ側面から射して来る外光を一旦障子の紙で濾過して、適当に弱める働きをしている。