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かいだん
階段
海野 十三
「新青年」博文館、1930(昭和5)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,588 字 · 32 页
友江田先生の顔色も窺ったが、気にはなりながらもそちらへ費す時間はなかった。その翌日も又次の日も僕の身体の中には、「彼奴」が生長して行った。斯くて予定の七日間が過ぎてしまったあとには、僕の身体には飢えた「彼奴」が跳梁することが感ぜられ、それとともに、あの若き婦人の肢体が網膜の奥に灼きつけられたようにいつまでも消えなかった。
2
翌年の春、僕は大学を卒業した。卒業に先立って僕達理科得業生中の大先輩である芳川厳太郎博士が所長をしている国立科学研究所から来ないかということであったから、友江田先生の意見を叩いてみた。友江田先生は大学に籍がありながら、同時に研究所にも席がある特別研究員だったから研究所の様子はよく知っている筈だった。
「……いいでしょう。君さえよいと思うのならね」と先生はしばらく間を置いて同意して呉れた。僕は先生が二つ返事で賛成して呉れなかったのを不服に思った。それは勿論、先生の慎重なる一面を物語るものであったと同時に、「信濃町」事件(というほどのことではないかも知れないが)に於ける先生の不審な態度も思い合すことを止めるわけには行かなかった。