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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
在线阅读吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 页
ゆるやかな音律の段落ごとに、太鼓がはいり、鐘が鳴って、また元のリズムへ返ってゆく。繰返し繰返し、僧の容子もその手もオーケストラ三昧に入っていて、いかにも愉しそうなのである。
室町期かそれ以前の念仏踊りの遺風音楽でもあるのだろうか。輪をなして踊る庶民が眼に泛んでくるようだった。仏教と庶民生活とが、娯楽の中にも溶け合っていた時代の風俗が音に描き出されている。それは到底、現代仏教の死灰からは呼び起こしえないものだと思った。
――と、聞き惚れていたら、突然、そのオーケストラはふつうの称名の調子に変ってしまった。外に佇んでいたぼくらに気づき、僧はその法楽三昧の遊戯を止めてしまったらしい。惜しいことである。現代仏教は元の素朴に返って、もっと庶民と一しょに働きもし、庶民と一しょに遊べばよいのに。
有馬道から神戸に入る。山手を東へ、生田区を一巡、生田神社で車を下りる。
古来著名な生田ノ森もあとかたはない。少々ばかり青いのはみな終戦後の植樹である。焼け色の石燈籠もまだ乱離の状態だ。境内の地上は一歩一歩に、それ以前の巨木の焦げた根コブを残していて、なお戦災の日をまざまざと偲ばせるものがある。