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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
在线阅读吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 页
しかも、馬にだって体力には限界があるし、人間のように、馬に精神力を求めるわけにはゆかないのである。
この点でも、ここからさらに西方一里以上の山地を迂回して、わざわざ鉄拐ヶ峰をこえ、あの嶮しい一ノ谷の真上へ出たなどという旧来の説は、机上の空論というしかない。
義経の鵯越えは、旧暦の二月七日だった。今の三月初めごろと考えていい。
けれど彼が京都を立つ数日前は、都では降雪があった。丹波路は残んの雪があったろう。この辺の山坂はどうだったろうか。
生田川口、明石口、そしてこことの三軍が、同時攻勢に出た時刻は、午前六時ごろであったという。途中はまだ暗かったにちがいない。友軍との諜し合わせは、約束だけで足りたろうか。峰々に人を伏せ、火合図なども用いたのではあるまいか。
一歩誤れば、平軍の中へ、わざわざ、身を捨てに入るようなものである。この坂道を、そぞろ馳せ下る思いはどうだったろう。その朝の彼の眉は。彼の姿は。そして暁の下に、敵を見たせつなは。
暮れかかる梅雨雲の下に、ぼくは果てない空想を追っていた。附近の谷にも峰にも、一羽の鳥影さえ、よぎりもしない。
すると、ぼくらの頭の上で、ふと少女たちの笑う声がした。