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めすについて

雌に就いて

太宰 治

「若草」1936(昭和11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,994 字 · 11 页

青空文庫

いそぎの仕事を思い出した。忘れぬうちに片づけてしまいたいから、あなたは、その間に、まちを見物していらっしゃい。しずかな、いいまちです。」

「いよいよぶちこわしだね。仕方がない。女は、はあ、と承諾する。着がえしてから部屋を出る。」

「僕は、ひっくりかえるようにして寝ころぶ。きょろきょろあたりを見まわす。」

「夕刊の運勢欄を見る。一白水星、旅行見合せ、とある。」

「一本三銭の Camel をくゆらす。すこし豪華な、ありがたい気持になる。自分が可愛くなる。」

「女中がそっとはいって来て、お床は? ということになる。」

「はね起きて、二つだよ、と快活に答える。ふと、お酒を呑みたく思うが、がまんをする。」

「そろそろ女のひとがかえって来ていいころだね。」

「まだだ。やがて女中のいなくなったのを見すまして、僕は奇妙なことをはじめる。」

「逃げるのじゃ、ないだろうね。」

「お金をしらべる。十円紙幣が三枚。小銭が二三円ある。」

「大丈夫だ。女がかえったときには、また、贋の仕事をはじめている。はやかったかしら、と女がつぶやく。多少おどおどしている。」

「答えない。仕事をつづけながら、僕にかまわずにおやすみなさい、と言う、すこし命令の口調だ。