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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

さがしあぐねて、おろおろで家へかえると、音枝はもう帰っていた。よそのおじさんというのは文吉の友人の友田で、友田に買ってもらった大きな風船をかかえて、音枝はにこにこしていた。その音枝をだきかかえて、安江は泣き笑いをしたのだった。……

ばたばたと足音が近づいてくる。安江はさっと障子をあけて待ちうけた。いきせききった音枝とぴったり気もちがあっていた。

「いたかい。」

「おかあさんきて。ヒミツカのそば。」

ぐったりしてぬれ縁にかけた音枝に下駄をぬがして、安江はゆっくりと歩いていった。ヒミツカのそばで強情はっているらしい夏樹への戦略を考えながら、九分九厘の安心で足は軽い。もうこっちのものだ。ヒミツカは庭のすみのススキのくさむらのことだった。幼稚園へはいったころにおぼえてきて、それ以来夏樹はそこへいろんな大せつなものをしまいこむくせがあった。虫めがねだの、ぴかぴかの油石だの、こわれたライターなど。そして時には思いがけない盗品がそこから出てきた。たとえば、友人にもらった親指の頭ほどの小さな清水焼の花びんだとか、ないないといってさがしていた文吉の、ペン・クラブのバッジだとか。