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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
しかしそれらのことはおとなにとっても覚えのあることなので、ある程度ヒミツカは秘密裏の共同管理として、冬になっても枯れたススキのまま残してあった。みんなにかくれたつもりでそこへ走ってゆく夏樹の喜びにみちた姿は、おとなたちを童心にかえらせ、ひそかな微笑で見ぬふりをしていた。近ごろはそんな姿をみることも少なくなったと思っていたら、きょうは彼自身をそこへかくそうとしている。
彼のヒミツカのススキはもう夏に近い姿で夜目にも青々と葉をのばしている。安江はわざとくさむらをへだてて、お互に姿の見えぬまま、やさしくよびかけた。
「夏樹ちゃん!」
「…………」
「おこりっこなーしよ。」
「…………」
「五つよむまに、でーてこい。――ひとつ ふたあつ みいっつ よーっつ いつう……」
わあっと夏樹は、予想通り虚勢をくずしてとびついてきた。そのかた手の手首をわざとぎゅうっとつかまえて、ぐいぐいひっぱりながら安江は、
「さあ、ゆびきり!」
おごそかな声であいている方の手を彼の顔のまん前につき出すと、夏樹は無条件で、小さな、カイコのような小ゆびをからませてくる。
「なんの、ゆびきりだい?」