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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

安江が聞いてみると、

「しらない。」

あっさりという。許されたつもりらしい。

「夏樹のこわがり。ばんにひとりでおしっこにもゆけないくせに、あれ、甘ったれてたんだな。だってひとりでこんなおそくまで――」

「ちがわい。ぼく、おかあちゃん、おこったかと思ったんだ。ごめんね、おかあちゃん。」

「なにが、ごめんなの。」

安江はもう、今となっては彼の意見を聞いた上で、いろいろいって聞かせるにとどめ、しかることはよそうと決心していた。彼ももうあとひと月ほどで満八歳になるはずだ。とび出すぐらいなのだから、八歳には八歳の意見があろう。りくつっぽくそう思ったのだが、夏樹は至極あっさりと、

「ぼく、わるいことしたの。」

「わるいことって。どうしたから?」

「…………」

「ね、夏樹ちゃんが、考えた通りいってごらん。」

「心配かけたから。」

「あ、そうか。それから。」

「それからあ、ね、あのね、兵六さんに貯金あげたから。」

「そう、貯金あげたこと、なぜわるかったの。」

「おねえちゃん、おこるんだもん。」

「おねえちゃんが、おこらなかったら、いいことかしら。」

「わかんない。」

夏樹はまたあっさり棄権する。