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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

はい、お願いいたします――」

調べてくれていたらしいが、そこもだめだった。また新しくダイヤルを回し出すのをみると、安江は何かいたたまらなくなり、手洗いに立った。しかし床次女医のよく通る声はそこまでおっかけてきた。そばに安江のいないことで少しぞんざいになり、

「――荒井さん? 私、床次。ね、いそがしい? うん、やんなっちゃうよ毎日。人殺しもつらいね。そうよ。ところでね、あんたんとこに宮川浜子っての、入院してない? うん、はじめうちへきたのよ。んんーん。暴行か、でもないかな。でもまあ、そんなとこらしい。それ聞いちゃったらおこってね、たんかきって帰っちゃったの。うん、ちょっと事情があってね。いいよ、いいよ。じゃあまたね。」

安江はいいようのない恥で、ふたたびその場へ、そ知らぬ顔では出てゆけない思いだった。しかし内心では、浜子のあの性格を思い、たんかをきったという彼女にも五分の道理がありそうな気がしていた。いくら浜子がアプレ娘だとはいえ、いきなりたんかをきるはずがないではないか。一つそこのところをくわしく聞かしてもらおうと思いながら、じゃけんに手洗いのじゃ口をひねり、たいしてよごれてもいない手をごしごし洗った。