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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
日ぐれの宿
「もういいです。うちの人にいうくらいならわたし、生みますわ。もうどうなってもいいです。」
そういって床次医院をとび出したのである。
日ぐれの宿
――ええ、まいどありがとうございます。おなじみの雑貨屋がやってまいりました。――
都心を少しはなれた焼けあとの、粗末な都営住宅街の入口である。そこの奥さんたちが、これから朝の洗たくをはじめようという時刻を目あてに、雑貨屋の車がとまったのだ。
――ええ、あらものからかなもの、たわしから石けん、お座敷ぼうきもございます。――
なれぬ呼びかけは兵六さんであった。彼がこの商売にかわってからもう十日位になるのに、例のお座敷ぼうきはまだついてまわっている。この三本残っているほうきが、彼にとっては、邪魔でならないらしい。そのうち売れるさと、雑貨屋の親方は、兵六さんの五日間の見習い期間中も自分の車につんでくれたが、その車のあと押しをしながら、おざしきぼうきにしゅろぼうき――の呼び声のところになると、兵六さんは思わずどきっとしたものだ。そして、親方の車にいてさえさばけなかったほうきは、そのまま兵六さんの車につまれている。それが売れるまでは親方からほうきを仕入れることはできないのだ。