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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
一そ小説なんかやめて、孤児院でもやればいい。」
どんと食卓をたたき、食器がなった。音枝がかなしい顔をし、夏樹がおびえて泣き出すと、文吉ははっとしたらしく、
「ごめんごめん。夏樹のことじゃないよ。かんべんしてくれな。おとうちゃんついこの暑さに疲れて、かんしゃくおこしたんだ。ごめん!」――
きょうもまたその暑さの中を、年とった父や母が、若い者のためにひきずり回されている。――
音枝はくしゅんとなり、それを夏樹に気どられまいと、つま先をみつめた。
ふらっと出かけたままなかなかもどってこない冬太郎を待ちあぐねて、音枝は、
「夏樹ちゃん、おねえちゃん御用で出かけるからさ、あんた、ひとりで留守番しててね。おにいちゃんが帰るまで、どこへもいかないでさ。」
「いやだあ。」
「そうお。じゃあ、いいわ。おみやげ、もうかったと。」
すると夏樹は急に音枝の腕にからみついて、
「する、する。留守番してるよ。その代り、ピストルだよ。」
彼はこのところ、ピストルのおもちゃがほしくてならないのだが、母も姉も、夏樹に甘い父までが、ピストルだけはぜったいに買ってくれない。何とかして買ってもらいたいと思いつづけているところへ、おみやげつきの留守番とあってはもっけのさいわいだ。