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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
戦争ごっこにしろ、どろぼうごっこにしろ、ピストルのない彼はいつだって殺され役にばかりなっているのだ。一ぺんぐらい買ってくれたってよさそうなものと、その限りではいつも母や姉を恨んでいたのだ。今日こそと思ってもち出したのに、音枝はやっぱり首をふり、
「それはごめんだね。アイス・クリームがいいでしょ。」
彼はアイス・クリームにも魅力がある。しかし、アイス・クリームはだまってたって、買ってきてくれるおみやげの種類である。そう思うと彼のくちびるは自然にとがり出し、
「いらない。アイス・クリームなんか。」
むくれてみたが、音枝はいつものように別の条件も出さず、
「そうお。じゃあ仕方がない。たのまないわ。うちへ泥坊がはいってもいいなら、遊びにいってもいいわよ。」
そういってさっさと出ていってしまったのだ。夏樹はむしゃくしゃする気持のあたりどころがなく、風どおしのよい縁側でねているねこのシロをけとばしておいて、そのはずみのようにどたんとその場にたおれた。ピストルのたまにあたった時の身ぶりである。泣きたいような気持だった。しかし泣いてみても、だれもいないと思うと本気で泣くこともできない。