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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

それが一種の楽しみにもなって音枝たちはおそいのも苦にしないのだが、きょうはちがう。浜子がまだ帰らないからだ。なんとかして、文吉の帰る前に浜子にもどってもらいたいのが安江と音枝の共通の願いだったのだが、浜子はなかなか姿をあらわさない。

「どこ、うろついてんだろ、ほんとに。」

そうはいっても十時までは映画でも見ているのかもしれないという一るのたのみがあったのだが、十一時すぎても帰ってこないとなると、安江のかんしゃくは不安の方へ移っていった。考えてみれば人にも語れないようなささいなことから招いた出来ごとなのだと思うと、安江の気持はめいった。

「あのときわたしが、あやまればよかったのかね。おとなげないことだよ、ほんとに。」

気弱くいう安江をなぐさめるように、音枝は、

「だって、ほんとにおかあさんをなんだと思ってるの。ひどいわよ。こんな心配かける権利ないわよ。」

「権利はないかもしれないがね、しかし心配する義務は私にしょわされてるからね。」

「…………」

「その義務者をかさにきて、少しいいすぎたのかもしれない。とにかく、まだ東京へ来て半月やそこらの娘を、とび出させる気持に追いこんだのはこっちなんだから、責任は感じるよ。