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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
気心も知れとるし。」
「おだてるのね。私だってヒステリーになりますよ。自分のうみもしない、しかも直接知りもしない人の子を育てるなんて、いやですよ。文吉つぁんはどうかしらないけど、私はいや。はっきりいっとくわ。――私、ちょっとお茶を買ってきます。茶もろくに買えん暮しで、子育てどころじゃない。」
そういって家を出たのだが、茶を買ってもどってくると男たちの様子は大分変っていた。兵六さんにとっては事態が好転したらしい。
「どうぞ。」
二つしかない湯飲みをふたりの前に出しながら、安江はわざと話の進展についてはふれなかった。兵六さんも何となく安江に気をおいている様子で、それをごまかすように音立てて茶をすすっていた。が、しかしその顔のどっかに勝利感のようなものがただよっているのを見のがすことはできない。安江にとって都合の悪いことをいい出せば、今度こそ手きびしくはねつけてやろうとひそかに安江は構えていたが、茶をのみ終ると兵六さんは急に立ちあがって、インバネスをきながら土間へおりてゆく。
「あら、お帰りですか。」
「あ、ちょっと急ぐのでね。文吉くんとよく相談して下さい。じゃあ文吉くん、よろしく。