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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
声で刃向ってきたなと思ったとき、まるで火に水をかけるように、玄関のブザーが鳴り出した。しかもなかなか鳴りやまぬ。ボタンの押しっぱなしだ。
さすがの夏樹も泣き声をおさめはしたが、しかし足の先はやっぱり両手でかかえこんで顔をしかめている。
「ごめんね。」
ささやいておいて取次に出ようとする音枝をさえぎって、中廊下をばたばた走って玄関へ出たのは浜子だった。十日ほど前安江をたよって、いなかの家を半ば無断でとび出してきた、十八の娘である。音枝はもう浜子についてゆかずに、
「やっと腰をさげるようになったわ。」
と、まゆをよせて聞き耳をたてている安江にささやいた。この家の玄関は板敷きなので、人を迎えるのにすわって手をつけとはいえぬが、せめてひざをついて応対するようにと、安江はいつも若い者にいっていた。それをそのまま音枝が浜子にいったのである。すると浜子は、人のよい音枝をみくびって言いかえしたという。
――お客さんは立ってるのにこっちがすわるなんて、封建的ですわ。男女同権ですもの――
そこで音枝はおかしいのをこらえて、
――でもね浜子さん、うちはそういうしきたりなのよ。