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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

「一つ、どなりこみにいくか。」

文吉はにやにやしていう。

「うまいこといってるわ。顔みるとだまってるくせにさ。だからおっつけられたんじゃないの。」

「おっつけられてよかったといったのはだれだい。」

「そりゃあわたしよ。でもそれとこれとは別ですよ。義務教育なんて、法律問題よ。」

「よく知ってるね。」

「少くとも長坂なんてやつよりは真けんよ。こんなことなら、はじめっからもらって籍でも入れとけばよかった。」

「そうだな。いったいほんとに籍にはいっとるのかね。それだってあやしいもんだよ。」

それを聞くと安江は青くなった。ランドセルのことまでいって楽しんでいるのに、もしもそんなことで音枝が学校へゆけなかったらどうしようと思ったからだ。

「じょうだんじゃないわ、兵六さんにかけあってよ。」

「いやだよおれ。あのへんは苦手だ。」

「気が弱いのね。手紙でいいわよ。来てくれって書いてよ。」

「お前書けばいいじゃないか。」

「男の方が威厳があって、こんなときはきくのよ。何にもほかのことかかなくていいわ。音枝の学校はどうなっているかってだけ書いて。ハガキでいいわ。三下り半でいいからさ。」

こんな相談をしているとき、がらっと戸があいて、