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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
十銭にことかく貧乏な詩人や失業者たちだから、本とうにもらうわけにはゆかない。小萩が生きていれば、ランドセルをくれるぐらいの親切はあったろうと思い、いいことに気がついたと思った。
花屋の前までくると赤いカーネーションがぱっと目をひいた。店へはいると、チューリップもストックも、フリージヤもガーベラも、そのほかいろいろな花がぎっしりつまっていた。十年に近い都会生活で、花の名も大分おぼえた安江だったが、安江はふと音枝のきた日のことを思い出し、菜の花ばかりを買った。つかねただけで新聞紙にも包んでくれないのを音枝はかかえて、歩きながら、
町では ちんちん ちんちりめん
里では なたねの はながさく
と、また安江の子もり歌を無邪気にうたう。
誕生もこないうちに、冬太郎の父親は三輪車をおくってよこした。人工栄養の子はそだちもおそくまだやっとつかまり立ちをしているのに、親はもう三輪車にのせたがっている。のれるまで大事にしておきますと手紙を出したが、いつのまにか音枝が毎日のってこぎまわった。だいぶいたんだころやっと冬太郎が乗れるようになり、写真をとっておくってやると、こんどは安全補助輪つきの四輪車をおくってきた。