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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
「判こ一つのせいよ。私たちルーズなのね。とにかく私たちだけは同じ姓にもなれるのにさ。」
「ま、いいさ。事実が証明する。」
「でも判こ一つだってバカにはできないわ。なにしろ二十年近くも一しょにくらす夫婦も、おしめから育てた親子も、みな同居人なんだもの。まだ私はいいわよ。内縁の妻とか何とかいえるけどさ、音枝なんかときたらあんた、まるで見向きもしない長坂なんてロクでもない男がさ、厳然たる親としてどっかに実在するのよ。――もどしてくれったらどうする?」
「大岡裁判だ、そしたら。」
「冗談じゃないわ。――でも、長坂幸一なんてどうしてるかしら。」
「兵六さんに聞きゃあわかろうがね。」
「聞く必要もないけど、もしかしたら音枝は聞きたいかもしれないと思わない。」
「思わないね。」
「そうね、思わないわ、私も。」
「それでいいよ。」
「いいわよ、ほんとに。長坂だの、鷲兵六だのって男は、私たちのつきあいの範囲の人じゃないわね。会えばこっちまでげすになる。」
しかし安江にはある一つの不安に似た思いがあった。いつか有楽町のホームでひょっこり出会った兵六さんから、長坂のうわさを聞いたのである。