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ざっかん

雑感

寺田 寅彦

「理科教育 第十一巻第十一号」1928(昭和3)年11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,894 字 · 4 页

青空文庫

そして更に生徒を相手にし助手にして、生徒から材料を集めさせたりして研究をすすめればよい。

間違いを教えたとしてもそれはそれほど恥ずべき事ではない。また生徒の害にもならない。科学の歴史は一面から見れば間違いの歴史である。間違える事なしには研究は進められない。誤魔化さないことだけが必要である。

小学校でも中学校でもせめて一週間に一時間でもいいから、こういう「自由研究」の時間を設けて、先生も生徒も一緒になって、何でも手近な題目を取扱い、そうして、自然が如何に分らない事だらけであるかという事、その分らない事が、熱と根気で向って行けば少しずつ少しずつ分って行く事、その少しずつ分って行く少なくも分ったような気がして行く事が如何に愉快なものであるかという事などを実習したらいいだろうと思う。先生の分らない事は大抵誰にも本当はよく分らない事である。分らない事は恥でも何でもない。分らない事を分ったような顔をするほど恥ずべき事はない。

手近い実例の人を動かす力は偉大なものである。そういう意味で、教師は時々は我邦の科学者の研究を生徒に紹介するがいいと思う。遠い西洋の大学者の大研究よりも手近い日本の小学者の小研究の方が遥かに切実な印象を日本の生徒の頭脳に刻みつけるであろう。