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ざっとう
雑沓
宮本 百合子
「中央公論」1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,832 字 · 50 页
三輪はそういう質問を出した宏子の顔を暫く黙って見守っていたが、やがて艶のいい桜色の顔を窓の方へ向けて、
「大丈夫よ」
と云った。
「あなたがたを裏切るようなことはしなくてよ」
間をおいて、
「私は、あなたやはる子さんと違うの。エゴイストなの。だから自分の誇りのためにだけでもそういうことはしないわ、良心のためじゃないの」
自由時間のとき、三輪はテーブルの上から新しく買って来たらしいレコードをとりあげ、
「ちょっと踊って来ない?」
と宏子を誘った。
「登誉子さんでも誘いなさいよ」
小一時間ばかり経つと三輪が、はる子と連立って来た。
「あなた、特別ここへかけさせてあげるわ」
三輪は、枕のところへフランス人形を飾ってある寝台の上に、片脚体の下へ折りこんだ形で坐っている自分のわきのところをたたいた。
「ありがと」
そのまま宏子のところへよって来て、はる子が、
「ちょっと、ハードル、ね」
と云った。
「――じゃ、都合わるかったらブラインドを下げて置く。いい?」
「三十分ばかりよ」
はる子は、骨組みのしっかりした肩を動かして窓をあけると、框へ手と足とを一どきにかけるような恰好をし、もう身軽く外の闇へ消え込んでしまった。