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ひなまつりとおひがん
雛祭りとお彼岸
折口 信夫
「東京日日新聞」1936(昭和11)年2月29日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,594 字 · 3 页
山籠り・野遊びというのは、里の神事に先立って女だけの共同の物忌みの日があったわけで、里の異性達の眼の届かぬ場所に籠ることによって行われるのである。これが後には春の行楽として、運動会・修学旅行などの古風なもののような形をとった地方もあるわけだが、この山籠り・野遊びが雛祭りと結合している地方が多い。雛祭りは王朝の風流に幻惑されて、支那伝来のものばかりと思われているが、平安朝の物語類をみると、現在でも地方に残っている禊ぎが行われた名残であることを示している。例えば光源氏、須磨謫居の件にも、三月の節供に大きな人形――自分の姿に似せた人形を船にのせて流す描写がある。
近代でも川に近い地方では、この日形代を川に投ずることがあり、「お名残り惜しや。来年もござれ」という類のことをいう。このこと及びいわゆる立雛の形から、雛人形は禊祓に用いる形代の変化と考えるべきである。その形代を直ちに流し捨てることもあったろうが、常に座右において親しんだことから人形となったが、何故上巳が女、端午が男の節供となったかというと、前述の山籠り・野遊びの時季になっていたに過ぎないのである。