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あめ
雨
織田 作之助
「海風」1938(昭和13)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,261 字 · 44 页
たような汚い将棋をし、負けると破産したような顔で相手を恨むといった風で、もともと上手とはいえないし誰にも敬遠されて、相手のないところから、ちょくちょく境内の蓮池の傍へ遊びに来る豹一に教えてやることにしたのだ。
筋がよいのか最初歩三つが一日経つと角落ちになり、やがて平手で指せた。ある日、和尚は、
「豹ぼん。何ぞ賭けんとおもろないな。和尚さんは白いりの饅頭六つ賭けるさかい、豹ぼんは……」
何も賭けるものがないので、負けたら蓮池から亀の子を掴まえて、和尚にくれてやることにした。実力以上の長考をしたが、ハメ手に掛って負けた。
夕闇の色を吸いこんで静まりかえった蓮池の面を瞶め、豹一はいつまでも境内にいた。和尚は檀家へ出かけた。将棋は負けても、亀の子を掴まえるのは上手だと豹一は力んだが、空しくあたりはすっかり夜が落ち、木魚の音を悲しく聞いた。亀の子がなかなか掴まらぬのですっかり自信をなくし、胸が苦しく焦り騒いで、半分泣いた。ふと、自分を呼ぶ声にうしろ向くと、
「ごはんも食べんと何してるのや」
門のところで母親が怖い顔して睨んでいた。
「亀とろ思てるのや」
と言うと、